なぜBVM換気は30:2で、高度な気道確保をしたときは非同期(6秒に1回)なの?
胸骨圧迫とBVM換気を30:2で行うことは、医療従事者には広く浸透しています。
しかし、改めてその理由を聞いてみると答えることができる人は意外と少ないです。
胸骨圧迫とBVM換気を同時に行うと何が起こるのか
基本的なことですが、空気の通り道である気道と食べ物の通り道である口腔〜食道は連続した空間です。喉頭蓋によって気道を塞ぐことで食べ物が気道に入らないような構造となっています。
バッグバルブマスク(BVM)換気を行うと口腔、鼻腔から入った空気は、気道内へと流れていきます。
胸骨圧迫をした時はどうでしょうか。
胸骨を押した瞬間、胸郭は潰れ、胸腔内圧が上昇します。空気の流れは圧較差によって決まります。圧の高い方から低い方へ、つまり、息を吐き出す流れになります。
これら二つを同時に行うと、息を吸う流れ、息を吐く流れが同時に起こり空気の流れがぶつかることになります。
ぶつかった空気の逃げ道が食道となります。
つまり、胸骨圧迫とBVM換気を同時に行うと、食道に空気が流れ、胃膨満を生じてしまいます。
高度な気道確保をしたら?
高度な気道確保、つまり気管挿管を行うと、気道までの道が確保され、食道と分離された状態になります。
そのため、胸骨圧迫と換気を同時に行なったところで、食道に空気が行くことはありません。
高度な気道確保をしたとき、換気回数が30:2から6秒に1回に変わるのはこのためです。
補足:BVM換気における非同期換気について
ACLS G2020から高度な気道確保をしていない状態での非同期換気(6秒に1回)が選択肢の一つとして挙げられています。ここは注意が必要なポイントですが、あくまでCCFを上げるための選択肢の一つとして挙げているだけであり、「G2020からBVMでも非同期換気で良いと推奨が変わった」というわけではありません。
シミュレーションで気道管理を学ぶ
AHA-ACLSプロバイダーコースでは、バッグバルブマスク換気の手技だけでなく、どんな時に必要か、具体的な判断をシミュレーションの中で学ぶことができます。手技自体は実はそこまで難しいものではありません。実践のなかで、きちんと気道・呼吸の評価をして、遅滞なくA(気道)、B(呼吸)の異常へのアプローチをすることが大きなハードルと考えます。AHA-ACLSプロバイダーコースではそれらを実践の中で学ぶことができます。