ACLSの種類 〜1日コース? 2日コース? Heart Code?〜

2023年3月に「Heart Code ACLS」がリリースされ、同じACLSの資格ではありますが、その形式は複数あり、受講される方はどれに申し込めばよいのか、迷うところだと思います。この記事では、それぞれの形式について解説していきます。

ACLSプロバイダーコースの種類

結論

いろいろありますが、コースを修了することで得ることができる資格は全て同じ!

ACLSプロバイダーコースは複数の開催形式がありますが、得ることができる資格は全て同じです。具体的な種類は以下の3つがあります。

  • ACLSトラディショナルコース
  • ACLSコース
  • Heart Code ACLS

ACLSトラディショナルコース

ビデオディカッションから実技まで、全ての内容が当日の会場で行われる。旧来の形式。
いわゆる2日コース。

ACLSトラディショナルコースはその名の通り、最も昔からある形式です。ACLSの構成は大きく分けるとビデオディスカッション実技に分けられますが、トラディショナルコースは全てを当日の会場にて実施します。そのため、コース時間は2日間に渡り実施されます。チームダイナミクス以外の動画でビデオディスカッションが含まれるのはこの形式のみです。時間をかけてじっくり学ぶことができます。

メリット
デメリット
  • 時間をかけてゆっくり学べる
  • 全ての映像でディスカッションができ、理解が深まる
  • 2日間お休みを取得する必要がある

ACLSコース

チームダイナミクス以外の動画視聴を自宅で終了させておくことで、当日のコース時間を短縮した形式
いわゆる1日コース。

ACLSコースはG2020より登場した形式です。ACLSでは、知識面はビデオ教材を中心にディスカッションを混じえながら学んでいきますが、ACLSコース(1日コース)はビデオ視聴を事前に終了させておく形式となっております。その結果、当日のコースを1日で修了することが可能となりました。知識面に関しては”ビデオ視聴ですでに習得している”ということが前提でコースが展開していくため、自己学習ができる人ということが必要条件となってきます。

ただし、団体によっては人数の制限などで時間に余裕を持たせて、ACLSコースでは本来省略しているディスカッションを組み込んでいるところもございます。イーエヌアシストでも同様に、事前勉強会(オンライン)やディスカッションを組み込むことで、急変対応の経験が乏しい方であっても問題なくご参加いただけるよう配慮しております。

メリット
デメリット
  • 1日で修了する
  • 人数調整や事前勉強会などを駆使すれば、2日コースと遜色ない学習効果を得ることができる
  • 知識面は自己学習に頼らざるを得ない部分がある
  • 当日のコース時間がややタイト
  • ビデオディスカッションが少ない

Heart Code ACLS

Heart Code ACLSオリジナルのコンテンツで補足説明を含めた全ての知識提供を事前のオンラインで終了させる形式
当日は完全に実技のみのため、コース時間が短い

2023年3月に日本語版がリリースされ、一部の団体ではすでに開催されている最も新しい形式です。
ACLSコース(1日コース)もある程度事前に修了させておくものですが、Heart Code ACLSは通常であれば当日行うような、補足説明やチームダイナミクスの部分まで知識面全てをHeat Code ACLSオリジナルコンテンツで事前に終了、当日は完全に実技のみという形式になります。ACLSコース(1日コース)以上に自己学習能力が求められるものとなっております。

また、もう一つ大きな特徴として、プロバイダーマニュアルが電子書籍であるという点があります。電子書籍の場合、閲覧ライセンスが2年で失効します。

メリット
デメリット
  • 1日コースよりさらにコース時間が短い
  • 知識面のほぼ全てが自己学習に委ねられる
  • プロバイダーマニュアルが2年間しか閲覧できず、それ以降の復習はできない

イーエヌアシストではHeart Code ACLSを開催する予定はありません

以下、イーエヌアシスト独自の見解です。AHA公式の見解ではございませんこと、ご理解ください。

Heart Code ACLSは現状日本の医療者にとって、十分な学習効果を得ることはかなり困難であると考えます

Heart Code ACLSは前述の通り、知識面の学習全てをビデオ教材による自己学習に委ねる形式です。その結果、コース時間の大幅な短縮が可能となり、日々多忙な医療従事者にとっては魅力的に映るプログラムとなっています。アメリカにおいてはその恩恵は非常に大きいです。アメリカでは州によってはACLSプロバイダー資格がなければ職務に従事することすら不可能になってしまうという背景があるため、”資格の取得”が受講の主目的になっています。そんな状況では、1日かつ短時間で修了できるHeart Code ACLSは大きな意義をもつものです。

一方日本ではどうでしょうか。専門医認定試験を除いて、ほぼ全ての方が「二次救命処置を学びたい」と”スキルの習得”を目的としています。そんな方にとって、利便性を重視しているHeart Code ACLSは不適当です。

ACLSではCPP(冠動脈灌流圧)やABCDEアプローチといった”蘇生科学”の理解が根底にあるべきです。これがなければ、換気がうまくできていないことに対してアプローチができなかったり、窒息が原因の心停止に除細動の準備に限られたリソースを注いでいたりと、アルゴリズム以外の大切な要素を達成できなくなります。
もちろんそこは1日コースやHeart Codeの動画においても解説されていますが、コース当日にその部分を理解できている方は循環器専門医を目指す医師を含めてもほとんど出会ったことがありません。
その理由として
・動画教材という、一方通行な知識提供のツールに一存していること。
・ACLSをアルゴリズムを学ぶ場と思っていること
があります。ここにはインストラクターによる受講者の認識の枠組み(Frame)への介入が必要となります。CPPという言葉だけ覚えても全く意味がありません。「なぜCPPが大切なのか」「どうすればCPPが良くなるのか」「CPPを具体的にどうやって評価するのか」「CPPの評価、介入を自身の職場でどうやって実践するのか」これらのような、単純暗記にとどまらないことがディスカッションで展開され、本当の理解に至るわけです。1日コースであれば時間調整によってディスカッションを組み込むことは可能ですが、利便性重視のHeart Codeにおいてはその余地すらありません。結果、”心停止アルゴリズムの流れ”など表層の理解にとどまってしまい、「ショックを成功させるための要素、それを実践するための具体策」など、本当に蘇生率・生存退院率を上げるためのスキル習得には至らないことは容易に想像できます。

”二次救命処置のスキル習得”を目的とする方はACLSコース(1日コース)もしくはACLSトラディショナルコース(2日コース)の受講をお勧めします。


イーエヌアシストではAHA公式のACLS1日コースを開催しています

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